「おお、やめて頂戴、デビッド!」 ジュリアンは殆ど悲鳴にも近い声を漏らした。「その格好、トレンチコートだなんて!」 かじかんだ手でコートを自分の椅子にかけながら、デビッドは同僚におどけた様子で肩を竦めて見せた。 「すまんね、ジュリアン、今度からもっと上等なコートを着てくるよ」 「そうそう、それに帽子と仮面でもつけてきてみて下さい、”奴”の代わりにデビッドさんがとっ捕まえられる」 「ハッハ、それだけはごめんだな」 「そうよ、ダニエル、ふざけている場合ではないの…」 深い息をついて、ジュリアンは様々な書類が散乱しているデスクで頭を抱えた。目に見えて疲労が溜まっている――尤も、それは彼女に限っての話ではなかったが。 デビッドはひょいと彼女のコンピュータのディスプレイを覗き込んだ。 「また何か新しい情報でも?」 「喜んでデビッド、私おかしくなるのもそう遠くないって気分よ。これなんだけど」 カチリとクリック音が響く。 ディスプレイに数枚の映像が映し出された。 トレンチコートの大柄の男。突きや蹴りを繰り出している画像だ。ボタンを押すと、映像の一つが動き出した。 「何だい、こりゃ?」 「1番新しい…今日入った情報よ。”彼”はどうやら実力あるファイター達の前にも姿を現しているらしいの。この画像は証言から作成したのよ」 動画をじっと眺めていたデビッドが言った、「…えらく人間離れした動きをするね」 「デイビィ、なかなか良い意見だわ、私もちょうどこの男に更なる疑問を抱いていたところなのよ、つまり、コイツは本当に人間なのか?ってね!」 「疑問、疑問、謎、謎、謎…なあジュリアン、我々はこれ以上は無いってぐらいピッタリのコードネームをコイツにつけたモンだな」 彼はとんとんとディスプレイを叩いた、「”Q”!傑作だね」 「私達はそれに答えを出さなくてはならない…早速これらの解析もしなくちゃいけないわ。仮にこの技を腹部及び後頭部への痛打と呼ぶわよ」 「見たまんまだね。じゃあこっちは屈伸からの胸部攻撃って所かい?」 ジュリアンはファイル名を次々に打ち込んでいく。これらを基に、また資料の作成だ。 ダニエルがコーヒーを運んできてくれた。礼を言って、皆でそれを飲んだ。 「――この…”Q”のファイトですが、猟奇事件とは何か関係があるんでしょうか」 「何とも言えんね」 デビッドが肩を竦めた。 「親愛なる大統領には何と報告したものやら」 「Mr.バーグマンも大変よね、こんなものの報告書を作らなきゃいけないなんて」 「ふん、だがまだ一般人には”Q”の存在を報せちゃいないんだろう?何てったってシークレットレベル4だ」 「こんなのがテレビででも報道されたら大パニックですよ。世界中で発生している猟奇事件、謎の組織集団による陰謀か!なんて」 「集団?」 ジュリアンはぴたりとダニエルを見据えた。 「貴方これは大勢による犯行だと考えているの?」 「え…だって、そんな、そうでしょう?ほぼ同時期に地球の裏側で行われてるのだってあるんですよ、何らかの集団による犯行としか考えられません」 彼女は黙ってパソコンに顔だけを向け、カチカチと2,3度操作をした。終了確認ウィンドウが現れる。 「ねえデビッド、私は本当におかしくなってきているのかしら」 「言いたい事は解るぜ、お嬢さん。多分オレも同じだからな」 「私、調べれば調べるほど――コイツのデータが増えていくほど、思うのよ、私達なんかではこの謎を解く事は不可能ではないのかしら、って」 「おいおい、我々で無理ならもうお手上げだな。じゃあ何かい?God knows 、コイツの正体を暴けるのは天に召します我らが父だけとでも?」 電子音が小さく響き、ディスプレイは真っ暗になった。 「――或いは神でさえも、ね」 ☆なじ☆ まあQの話ですがQなんて出せる訳無い訳で…CIAとか全然判りまシェンV デタラメバッカV あのギルにも解んないんだから本気でQの正体て解らんのだろうなあと。 04.9.7 |
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