お寺の屋根の上、学校帰りの焔悠鉈は寝転がって青空を眺めながら溜息をついた。
高校3年生である彼が今この時期に思い悩む事と言えば、自分の進路についてでありそうなものだが、彼を含め彼の同級生殆どはその事について心配していたりはしなかった。 いわゆる”普通の”大学へ進む者など皆無といっても良いぐらいで、個人にあった”就職”先を先生達が手配してくれる。この町の学校ではとりあえず単位をとって卒業できるレベルの偏差値さえあれば良く、重要視されるのは”実技”の方なのだ。
しかし。
悠鉈は殆ど哲学者めいた表情をして、深く息を吐く。
例外だっているのだ。”就職”せずに、普通に勉強して、普通に学生生活を送る、普通の人間達が通う大学へ行きたいと思う者が。
「やっぱり悠鉈だ、何やってんの?」
とん、と軽い着地音がして、同じく学校帰りの同級生・黒澤早雷が立っていた。
悠鉈はちらっと彼女の方を見ただけで、また憂いを帯びた目で空を見遣った。
「…早雷はさあ…聞いた?いぶきの進路」
「ああ、うん、あれでしょ、一般大学受けたいって言うんでしょ。凄いわよねー、知ってる?卒業試験」
「それは知らない、何?」
「格闘のプロを倒せ、だって、しかも5分以内で」
「うわっ、何だよそれ!」
悠鉈は跳ね起きた。
「無茶言うよ、こないだだって訳の判んない変な組織の資料ファイル奪取任務とかあったしさ、もっと優しい試験にしてやればいいのに」
「あんたね、この里でこの歳にもなってそんな事言う?忍びとしての心得ってモンが…ああそっか、いぶきの事だもんねえ」
ニヤリと笑った早雷を見て、悠鉈は慌ててまた寝転がった。
「だっだからさ、そうじゃなくて、ホラ!その…いぶきは、…俺達と一緒に活動するの嫌なのかなあ…」
いぶきは彼の幼馴染――と言っても、この里の子ども達は皆そうであったが(それも他に類を見ない環境の)――で、幼稚園の頃からずっと一緒に遊んだり、特訓したりしていた。 比較的おっとりした性格の悠鉈は、積極的で溌剌としたいぶきとバランスが取れていた。
「んー、別にそういう訳じゃないと思うわよ。ホラやっぱあたし達、忍者である前に花の女子高生!普通の女の子に憧れもある訳よ。小中高はずーっとこの里の学校だったからさ、せめて大学で!ってんじゃない?」
「…そうかァ…」
そこで会話が途切れ、沈黙が流れた。早雷が屋根の先端で足をブラブラさせながら下を見ていると、突然悠鉈が言った。
「俺もついてく」
「はっ?」
「ついてくよ、うん決めた!俺もいぶきと一緒に行く!」
「ちょ、あの、悠鉈さん!? 何を仰って…」
「大丈夫だよ、俺はちゃんと就職するから!いぶきについてくだけ、荷物持ちでも何でもいいや、先生達に頼んでくる!」
言うなり鞄をさっと掴んで、ぴょーんと屋根の上から飛び降りた。
「あ、コラ悠鉈君、また屋根の上に…!」
「すいません三条さん、俺ちょっと急いでるのでまた今度!」
すぐ下に三条正之がいたらしく、声が聞こえてきたが悠鉈の走り去る音の方が大きかった。
「ちょっとー!悠鉈ー!?」
思わず身を乗り出した早雷も、三条とバッチリ目が合ってしまった。
「早雷さんまで!他の屋根はともかくお寺はいけないと何度も言っているでしょう!ちょっとこちらへ来なさい!」
「わっ、ごごっ、ごめんなさい!」
慌てながらも早雷は、颯爽と走り去った悠鉈の事を心配…というより不憫に思っていた。
そういえば言うのを忘れていたが、いぶきの大学進学の1番の目的は、”素敵な彼氏とキャンパスライフを楽しむ事”だった、と。





☆なじ☆
性格捏造も甚だしいですネV
SSシリーズは何が何でもサブキャラも出すっちゅー事なのですが、流石に忍者村の皆さん全員は無理だったので友達2人と趣味で三条☆ 悠鉈は完全にスト3オールアバウトのスタッフさんイラストのイメージだけで書いてます。
04.9.4




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